にごり酢とは?話題沸騰中の、酢酸菌が入っているお酢

お酢を知ろう

酢酸菌膜

にごり酢というお酢をご存じですか?にごり酢とは、お酢の発酵に必要な酢酸菌をろ過せずに残したお酢です。一般的なお酢は、にごりが取り除かれて透き通っていますが、にごり酢は、濁った見た目をしています。日本酒で例えるなら、にごり酒にあたるものです。

このにごりの正体は、酢酸菌とお酢の原材料成分です。酢酸菌は、目に見えない小さな微生物ですが、酢に溶けることはないので、お酢自体が濁って見えます。さて、この「酢酸菌入りのにごり酢」は、免疫の働きをサポートすると話題になっています。今回は、注目のにごり酢の効果について、詳しく解説します。

にごり酢の効果

にごり酢は、「酢酸」による効果と、「酢酸菌」による効果を両取りできるところが魅力です。

「酢酸」の摂取による効果

酢酸には、以下のような健康効果が報告されています。

各項目をクリックすると、詳細を解説したブログ記事に繋がっています。ぜひご覧ください。

「酢酸菌」による効果

酢酸菌は自然免疫を担当する免疫細胞を活性化させる

細菌やウイルス、寄生虫などの異物が体の中に侵入したとき、異物を排除して体を守ろうとするシステムを免疫といいます。免疫には、ヒトの身体が生まれながらにして備え持っている自然免疫と、病原体が体内に侵入したあと獲得する獲得免疫があります。

近年、自然免疫の研究が大きく進展しました。自然免疫を担当する免疫細胞(マクロファージや樹状細胞など)には、『TLR(トル様受容体)』という異物発見センサーが存在することが明らかになったのです。現在、ヒトのTLRは10種報告されており、それぞれのセンサーは、特定の成分に対して反応し、免疫細胞を活性化させることが明らかになってきました。

酢酸菌は、TLR4のセンサーを反応させる存在

10種類のTLRセンサーは、それぞれ反応する物質が異なります。酢酸菌は、4番目のセンサー(TLR4)を反応させることができるグラム陰性菌の一つです。近年、酢酸菌の摂取によってTLR4が機能すると、免疫バランスを調え、免疫の誤作動や免疫の過剰反応(アレルギー症状)を抑制する働きがあることが分かってきました。以下、研究報告例をご紹介します。

【1】酢酸菌を継続して経口摂取したマウスは、スギ花粉症の症状が緩和された

【2】日常的に鼻の不快感を訴える日本人男女を対象に、酢酸菌を毎日摂取してもらった。4週間の継続摂取の結果、鼻の不快感が緩和された

【3】酢酸菌を毎日摂取することで、摂取4週間後には花粉症による鼻づまりの不快感が改善された

※参考文献:
INAGAWA etc, Anticancer Research Aug 2019, 39 (8) 4511-4516
・吉岡ほか, 薬理と治療, 47, 461-467, 2019
・上條ほか, 薬理と治療, 47, 1993-1999, 2019
最新研究報告・酢酸菌の花粉症への効果|最新知見 花粉症への効果|酢酸菌ライフ

なぜ、酢酸菌がTLR4のセンサーに反応するのか?という疑問については、酢酸菌の細胞壁を構成する成分(リポ多糖:LPS)が関わってくるのですが、詳細は、以下の記事で詳しく解説しています。

なお、『酢酸菌がアルコール分解酵素を持っている』ことを理由に、にごり酢が飲酒時の肝機能をサポートすると謳っているメディアがあります。しかし、酢酸菌の飲酒ケアに対する効果は、にごり酢ではなく、酢酸菌酵素をそのまま摂取した場合の研究報告という点に注意が必要です。

市販のお酢として製品化されているものについては、加熱によりアルコール分解酵素の働きは失なわれているものと考えた方が良いでしょう。

昔のお酢はにごり酢が普通だった

現在市販されているお酢は、にごりのない透明なものが一般的ですが、昔のお酢は、現在に比べ、ろ過が粗かったため、大なり小なり、にごりを含むお酢でした。とば屋の酢も昔は濁っていたため、白酢とよばれていたことがあったと言い伝えで聞いています。

現代の工業的な酢造りでは、フィルター濾過、珪藻土濾過、精密ろ過など、ろ過の技術が上がったため、精巧に取り除くことができてしまいます。しかし、「にごり酢」が注目されることで、今まで取り除かれていたものに光があたり、昔ながらの酢の価値が再認識されるきっかけとなっています。

酢の醸造所が、それぞれ長い時間をかけて育んできた酢酸菌を味わえる、稀少なにごり酢。ぜひ、皆さんに味わっていただきたいと思います。

とば屋酢店のにごり酢

とば屋酢店も、数年前からにごり酢の開発に取り組んでいます。当店の米酢は、甘酒仕込みで、 米と麹をろ過せず、そのまま仕込みます。そのため、原料由来の酢の粕が多く、非常に濃いにごりをつくることができます。そのにごり部分には、相当濃い酢酸菌が含まれていることが分析から明らかになっています。

また、昔ながらの伝統製法で長期間熟成をすると、お酢に酢酸菌成分が溶け出します。酢酸発酵を終えた酢酸菌は、生育が止まり、熟成の過程で自己消化し始めるのです。菌の体がもろみ液に溶け出して、酢そのものの味わいにも影響を与えると考えています。

※参考:醸造酢に含まれる酢酸菌菌体由来成分の機能性

とば屋のにごり酢を試食してくださった寿司職人の皆さまからは、熱い期待をお寄せいただいております。にごりが濃いからこそ技術的に難しいことも多く、販売開始に向けて、研究を重ねる日々です。皆さまにお届けできる日を、どうぞお楽しみに!


中野 貴之

中野 貴之

酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目

「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。

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