植物性ミルクとお酢の組み合わせ
植物性ミルクとは、豆やナッツ、穀物など植物性の原材料から作られる乳白色の液体です。美容・健康への意識の高まりとともに、さまざまな植物性ミルクが注目を集めるようになりました。牛乳の代わりに使えるため、お酢ドリンクのブレンドに使いたいとお考えの方もいらっしゃると思います。
そこで、手に入りやすい5種類の植物性ミルクとお酢を組み合わせた結果を、皆さまに共有します。この情報をもとに、オリジナルの酢ドリンクづくりにお役立てください!
調合の方針
最も手に入れやすいミルクである、牛乳の調合量を基本に考えます。調合のレシピは以下の通りです。牛乳と混ぜたときに、私が飲みやすいと思う割合を基準にしています。
・とば屋の飲む酢 お酢蜜20ml + ミルク100ml(6倍希釈)
・とば屋の純米酢 壺之酢15ml + ミルク105ml(7倍希釈)
また、それぞれのミルクについて、手に入れやすさ・飲みやすさ・トロミ具合(酢との反応)を5段階評価でまとめました。
【1】豆乳/Soy Milk
豆乳は大豆から作られます。高たんぱく質で低脂肪、ビタミンBや鉄が豊富で、栄養価の高い植物性ミルクです。豆乳は、豆腐をつくるときに必ず作られるものですので、日本人にとってなじみ深い飲み物です。どこのスーパーでも手に入れることができます。
原材料の大豆は『畑の肉』といわれるほど、タンパク質を豊富に含んでいます。豆乳に含まれるタンパク質量は、牛乳と同じくらいです。『ソイミルク』『ソイラテ』などとして、カフェメニューにも採用されています。
無調整豆乳100ml+飲む酢 お酢蜜20ml (6倍希釈)
- 手に入りやすさ:5
- 飲みやすさ:5
- トロミ具合:5
お酢を混ぜると、非常にしっかりと層状に固まりました。濾したらすぐにでも、カッテージチーズができそうな感じです。お酢蜜の甘さのおかげで、大豆由来の豆臭さは一切なく、とても飲みやすい仕上がりとなりました。腹持ちも良さそう。
豆乳にたくさん含まれているタンパク質が酸によって固まったものと考えられます。冷たい豆乳であってもしっかり分離する点が、牛乳との違いです。
【2】アーモンドミルク/Almond Milk
アーモンドミルクは、ナッツのアーモンドから作られます。低カロリーでビタミンEやカルシウムが豊富です。数年前から一躍人気になった植物性ミルクで、美容や健康によいイメージを持っている方が多いようです。
牛乳や豆乳に比べ、タンパク質が多く含まれていません。非常にサラッとした飲み口で、後味も軽く、スッキリと飲めます。アーモンドの香りは少し感じる程度。少し青みがかった白さ際立つ乳白色です。
砂糖不使用アーモンドミルク100ml+飲む酢 お酢蜜20ml (6倍希釈)
- 手に入りやすさ:4
- 飲みやすさ:4
- トロミ具合:2
お酢を混ぜると、トロミがつくというよりは、分離して、少しモロモロが出る程度の変化を見せました。飲み物としての一体感はあまりありません。
ちなみに、時間が経つと、透明な液体と沈殿物の2層に分かれました。
モロモロの正体は、アーモンドに含まれるたんぱく質だと考えられます。アーモンドに含まれるたんぱく質は、牛乳や豆乳の1/6程度ですので、大きな塊になるほど集まらなかったと考察しています。
また、今回使用したアーモンドミルクが特に薄いものだった可能性もあります。アーモンドミルクは、生アーモンドと水をミキサーに入れて混ぜて絞るだけで作ることができるので、自家製アーモンドミルクで検証すると、また違った結果になるかもしれませんね!
味の方は、酸味の方が強く出る仕上がりとなりました。もともとのアーモンドミルクが主張の小さいサラッとした飲み物だったため、お酢が勝ったと言えるでしょう。
【3】オーツミルク/Oat Milk
オーツミルクは、オーツ麦から作られます。オーツ麦というのは、オートミールの原料に使われる麦で、ヨーロッパ諸国やアメリカでは広く食されている穀物です。食物繊維が豊富で低GI、穀物ならではのデンプンの甘みとクリーミーな質感が特徴。玄米色というのでしょうか。少し黄茶色を帯びた乳白色です。
砂糖不使用オーツミルク100ml+飲む酢 お酢蜜20ml (6倍希釈)
- 手に入りやすさ:3
- 飲みやすさ:5
- トロミ具合:2
お酢を混ぜると、小さな白い粒ができる程度で、大きな変化は見られませんでした。オーツミルクは、牛乳や豆乳と比べると、たんぱく質含有量が少ないため、分離するものも少なかったようです。
ミルク成分多めのカフェオレのような色です。砂糖不使用でもオーツミルク自体、麦由来のデンプンの甘さがあります。これが、お酢蜜と混ざるとスッキリした甘酒のような風合いになり、非常に飲みやすい。よく冷やしてグイッと飲みたいですね。
お酢蜜と混ぜたオーツミルクをしばらく放置すると、綺麗に二層に分かれました。面白いことに、オーツミルクの場合、凝固した成分が上に浮かんでいます。アーモンドミルクの分離では、液相が上でしたね。
このオーツミルクの沈殿物はまろやかで、とても美味しかったので、オーツミルクでチーズをつくったら、とても美味しくなりそうな予感がします。
【4】ココナッツミルク/Coconut Milk
ココナッツミルクはココナッツの種子から作られる甘い液体です。タイカレーやタピオカ入りのデザートなど、東南アジア系の料理でよく使用されています。日本では、輸入食品店や業務用スーパーなどで入手することができます。ちなみに、ココナッツミルクを酢酸菌発酵させると「ナタデココ」がつくられます。
中鎖脂肪酸をはじめ脂質が多く、リッチでまろやかな味わいが特徴です。真っ白な乳白色の液体ですが、他の植物性ミルクとは異なり、25℃以下に冷やすと油分が分離します。ココナッツ自体が甘さを持っているため、純米酢 壺之酢でブレンドしてみました。
ココナッツミルク105ml+純米酢 壺之酢15ml (7倍希釈)
- 手に入りやすさ:4
- 飲みやすさ:2
- トロミ具合:2
お酢を入れて混ぜると、ふわふわになりました。これは、ココナッツの油脂分が酢と混ざって乳化したのではないかと考察しています。(※乳化とは、水と油のように本来は混ざり合わないものが均一に混ざり合う状態のこと)凝集ではなく、乳化作用が働いたとすると、他の植物性ミルクとはまったく異なる結果なので、とても面白いと感じます。
ちなみに、味の相性は良くないと感じました。酸味はあまり感じないのに、ぼんやりしているといいますか、ちぐはぐな感じです。コクが足りないのでしょうか。東南アジア料理では、ココナッツミルク×柑橘果汁は定番の組み合わせなので、唐辛子やナンプラーなどの旨味をしっかり取り入れて、料理に仕上げると良さそうに思います。
【5】ピーミルク(えんどう豆ミルク) / Pea Milk
ピーミルクは、えんどう豆から作られます。高たんぱく質で、大豆とはまた違う豆の風味が特徴です。あまり有名な植物性ミルクではありませんので、取り扱っているお店は少なく、私の近所のスーパーでは砂糖不使用のものは手に入りませんでした。
すこし黄色を帯びた乳白色です。砂糖を添加しているとはいえ、ほんのり甘い程度。そのまま飲むと、スッキリしていてとても美味しいです。
ピーミルク100ml+飲む酢 お酢蜜20ml (6倍希釈)
- 手に入りやすさ:2
- 飲みやすさ:4
- トロミ具合:3
お酢を入れて混ぜると、あっという間に分離しました。非常によく固まります。見た目は湯葉です。豆乳のようなモッタリした感じはなく、さらさらの液体のなかに、ひらひらした湯葉が浮いている感じです。エンドウ豆のタンパク質成分が集まって分離したものと考えられます。モロモロが多いため、濾過すればすぐにでもカッテージチーズが作れそうです。
よく分離しますが、トロミという表現には合いません。クセが少なく、喉ごしも良いので、とても飲みやすいです。
砂糖入りの植物性ミルクは、砂糖が入っているもののジュースほどではないので、純米酢と混ぜると、酢の酸味が勝ってしまいがちです。飲みやすさを考えると、お酢蜜を使うことをおすすめします。
ミルクの温度によっても、テクスチャに違いが出るかもしれませんね
その他の植物性ミルク
今回は5種類の植物性ミルクで検証しました。植物性ミルクは、他にもさまざまなものがあります。お米を原料にしたライスミルク、ナッツを原料にしたマカダミアミルクやくるみミルク、豆類を原料にしたピーナッツミルク。市場には出回っていないものもたくさんあります。
植物性ミルクは、牛乳の代わりとしてだけでなく、調理特性や加工の方法など、活発に研究されています。まだ分からないことがたくさんある分野です。もちろん、お酢との組み合わせを検証するようなことも全然進んでいません。ぜひ、皆さんご自身で試していただいて、美味しい組み合わせを教えていただければ嬉しいです!
中野 貴之
酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目
「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。
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