自家製パイナップル酢で、おいしいカクテルビネガーを作ろう
初夏に手に入れやすいフルーツのひとつ、パイナップルを使って美味しい果実酢を作りませんか?パイナップルの薫り高さと酢の爽やかな酸味の相性はよく、酢ドリンクとしても、お料理にも使いやすいのが魅力です。
パイナップルをお酢に漬けると嬉しいポイント
まずは、パイナップルの栄養素をみてみましょう。日本食品標準成分表2023年版(八訂)より、生パインアップル100g(一口サイズ4切れ程度)に含まれる主な栄養素です。
パイナップルに含まれる主な栄養素 | 100g中 |
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エネルギー | 231kcal |
水分 | 85.2g |
糖質 | 12.5g |
ビタミンB1 | 0.09mg |
ビタミンC | 35mg |
食物繊維 | 1.2g |
※炭水化物から食物繊維を差し引いた量を、食品表示基準上の「糖質」として計算しています
生パインアップルは、水分量と糖質を合わせると96.7%で、みずみずしい甘さが特徴のフルーツです。
①糖質(とくにショ糖)が多いので常温でも甘味が強い
ブドウ糖や果糖など、糖の構造によって甘味に違いが生じます。酢ドリンクでは、果糖とショ糖がよく使われますが、果糖は冷たい方が甘味が強く、ショ糖は温度で変化しないという特徴があります。
パイナップルは糖類を多く含んでいますが、なかでもショ糖が多く含まれています。他の果物と比べてみても、バナナに次ぐくらいの量です。ショ糖が多いということは、常温でも甘さを感じやすいということ。パイナップル酢は、甘さを引き出すために氷で冷やす必要はなく、常温でも飲みやすく仕上がります。
②タンパク質分解酵素「ブロメライン」の活性が低下
パイナップルには、お肉のタンパク質を分解してくれる酵素「ブロメライン」が含まれています。この分解酵素(プロテアーゼ)は、お肉を柔らかくしてくれたり、お肉と一緒に食べることで、消化を促進してくれたりします。ブロメラインによる薬理学的な作用は、食品業界だけでなく、化粧品や医薬品分野においても広く活用されています。とても重要な酵素です。
しかし、生のパイナップルを食べると、舌や口がヒリヒリすることがあります。これは、私たちの体を構成しているタンパク質を、ブロメラインが分解し、刺激を与えているからです。ブロメラインが最も活性化する最適pHは4~7です。お酢のpHは通常2〜3程度ですので、このような酸性条件は、酵素活性は低下するものと考えられます。つまり、酢漬けにしたパイナップルは、生のパイナップルよりも食べやすくなると考えられます。
③水溶性ビタミンB1、Cが豊富
パイナップルには、ビタミンB1やビタミンCといった水溶性ビタミンが豊富に含まれています。ビタミンは、体内のさまざまな代謝に必要な酵素の働きを補っています。お酢に漬けると、水溶性ビタミンが酢漬け液に溶け出します。
水溶性ビタミンは、熱や光に弱い不安定な物質ですが、酸性環境では比較的安定とされています。パイナップルの魅力は、ビタミンたっぷりのみずみずしさです。そのみずみずしさをもたらすビタミンを保ちつつ、美味しい飲み物に昇華してくれます。
※参考文献
パイナップルに含まれるタンパク質分解酵素ブロメラインの研究動向:生化学および抽出・精製
ビタミン | e-ヘルスネット(厚生労働省)
パイナップル酢の作り方
材料
- パイナップル 約100g
- 壺之酢(純米酢) 200cc
- 氷砂糖(お好みで黒砂糖)100g
作り方
1. パイナップル4つ割りを2cm位に切ります。
2. 容器をよく洗浄してください。
(熱湯消毒がお勧めです。)
3. 氷砂糖、パイナップル、壺之酢の順に入れます。
4. 軽くかき混ぜてください。
5. 常温で7日程度。氷砂糖が溶けたら出来上がりです。
(時々、容器をかき混ぜると氷砂糖が早く溶けます。)
パイナップル酢のおいしい飲み方
生のパイナップルは、とても薫り高い芳香が特徴的です。しかし、酢漬けにすると、香りの存在感は薄まり、他の飲み物と馴染みやすいという特徴があります。
牛乳割り(おすすめ!)
スムージーのようにドロドロ感を楽しんでいただくのがおすすめです。牛乳は少なめに、ゆっくり混ぜると、もったり感が出ます。短時間、冷凍庫に入れて、シェイクっぽく仕上げるのも美味しいですよ。
グレープフルーツやライムなどの柑橘系のジュース
クエン酸系の柑橘ジュースとの相性がとても良いです。実際、パイナップルジュースは、カクテルなどでは、柑橘ジュースと合わせられることが多いようです。パイナップル酢についても、お酢を飲むという意識で使うよりも、コクを上げたノンアルコールカクテルサワーをつくるつもりで使うのがおすすめです。思い切って、アルコールと合わせてみても良いかもしれませんね!
パイナップル酢漬けの果肉の使い道
1週間パイナップル酢を漬けたら、果肉を取り出してもOKです。もちろん、そのまま漬けっぱなしにしても問題ありません。取り出したパイナップルは、めちゃくちゃ酸っぱいです。いろいろな果実の酢漬けを食べたことがありますが、パイナップル酢漬けの酸度は群を抜いて強烈だと感じます。
正直、そのまま食べるには酸が強すぎるため、お料理などで、他の調味料と一緒に使ったり、別の水分で薄めるのがおすすめです。
お肉の漬け液・マリネに
パイナップルのタンパク質分解酵素「ブロメライン」を活かし、潰したパイナップルをお肉に揉みこんで、下味冷凍保存をしましょう!パイナップルに醤油とトマトケチャップを混ぜ合わせた酢豚風のものがおすすめです。
パイナップル寒天ゼリー
パイナップルの酢漬けとしてそのまま食べたり、フルーツ代わりにデザートにお使いいただけます。パイナップルはタンパク分解酵素をもっているため、ゼラチンでは固めることができませんが、寒天を使えば大丈夫。黄色が鮮やかで美味しそうに仕上がります!ただ、やはり非常に酸っぱいので、寒天にしっかり砂糖を入れて甘味を補完した方がよいと思います。
中野 貴之
酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目
「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。