酢たまねぎの栄養成分と健康効果

お酢を知ろう

酢たまねぎの栄養成分

酢たまねぎは、玉ねぎを酢に漬けたものです。酢と玉ねぎの健康効果を一挙まとめて摂取することができる健康食品として、世界中で愛用されています。この記事では、酢玉ねぎの栄養面について、グッと掘り下げてご紹介します。

玉ねぎは意外に糖質が多い野菜

まず、玉ねぎの栄養素を見てみましょう。日本食品標準成分表増補2023年(八訂)より、生のたまねぎ100g(中サイズ半分程度)に含まれる主な栄養素をご覧ください。

主な栄養素(100g中)水さらし
エネルギー33kcal24kcal
糖質※6.9g4.6g
カリウム150mg88mg
ビタミンB10.04mg0.03mg
ビタミンB60.14mg0.09mg
ビタミンC7mg5mg
葉酸15μg11μg
食物繊維1.5g1.5g
※炭水化物から食物繊維を差し引いた量を、食品表示基準上の「糖質」として計算しています

玉ねぎの成分をみてみると、ビタミン類やミネラル類で特筆するほど多いものはありません。あえて挙げると、他の野菜と比べて糖質が多いです。実は、玉ねぎの糖分を原料としたお酢がつくられるくらい糖質となる炭水化物が多いのです。このお酢は、玉ねぎの酢漬けである『酢たまねぎ』と区別して、『玉ねぎ酢』と呼ばれています。

お酢は、原料の糖分をアルコール発酵⇒酢酸発酵させてつくります。私はまだ飲んだことがないのですが、玉ねぎ由来の味わいになるはずなので、米酢や果実酢とはまったく異なるものではないかと想像しています

特筆すべきは硫化アリル(イソアリイン)

玉ねぎの健康成分で最も有名なのは、硫化アリル(イソアリイン)です。硫化アリルは、辛味の元となる成分で、玉ねぎらしい香りをもたらすものであり、みじん切りをする時に涙が出てしまう原因でもあります。

玉ねぎに含まれているイソアリインは、水に溶けやすく、熱に弱い性質をもっています。玉ねぎをそのまま食べるのが最も効率よく摂取することができますが、刺激が強いです。一般的に、水にさらしたり、しばらく放置して揮発させたり、加熱をして別の物質に変化させたりして、食べやすく調理します。

玉ねぎに含まれる硫化アリルは、新陳代謝を活発にし、血液をサラサラにすると期待されています。また、強力な抗菌・殺菌作用をもっている点も重要です。 

※参考文献:新玉ねぎと普通の玉ねぎの違いについて教えてください。:農林水産省

ポリフェノール『ケルセチン』がたっぷり

玉ねぎには「ケルセチン」と呼ばれるフラボノイド(植物天然色素)が特異的に多く含まれています。フラボノイドはポリフェノールの一種です。ポリフェノールは、抗酸化物質であることが知られています。

活性酸素を取り除き、酸化の働きを抑える物質のことです。活性酸素は微量であれば人体に有用な働きをしますが、大量に生成されると過酸化脂質を作り出し、動脈硬化・がん・老化・免疫機能の低下などを引き起こします。

抗酸化物質 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

ケルセチンそのものは吸収されにくい成分ですが、玉ねぎの場合、ケルセチン配糖体という吸収されやすい形で多く含まれています。玉ねぎの皮に近い外側に、より多く含まれています。また、紫玉ねぎが最も多く、次いで黄玉ねぎ、白玉ねぎ(新玉ねぎ)にはあまり含まれておらず、品種によって成分量に違いがあると報告されています。

※参考文献:
清枝 希帆, 前川 昌子, タマネギ外皮中のケルセチンによる羊毛の染色, 日本家政学会誌
津志田 藤二郎ほか. タマネギに存在するフラボノイド配糖体の分析および化学合成による同定–野菜・果実のフラボノイドに関する研究-1-. 日本食品科学工学会誌

他にも、ビタミンBやカリウムなど積極的に摂りたい栄養素がたくさん含まれています。辛みを上手に緩和しつつ、毎日の食事に摂り入れたいですね。

お酢に玉ねぎを漬けると、栄養成分はどうなるのか

お酢のほとんどは水分なので、水溶性の栄養成分が溶け出します。上記では、日本食品標準成分表増補2023年(八訂)の通常時の玉ねぎ水にさらした玉ねぎのデータを並べました。水にさらすことで、ビタミンやカリウムなどの栄養素が減っていることがわかります。

酢に漬けると、玉ねぎの断面から、硫化アリル(イソアリイン)、ケルセチン配糖体、ビタミンB、ビタミンC、カリウムなどのミネラルが一部、溶け出します。したがって、切り方によって、栄養成分の流出度合いが変わります。

栄養成分の流出量は、玉ねぎの繊維に沿って切る<玉ねぎの繊維を断ち切る<みじん切り<すりおろしの順に多いです。断面が多いほど、成分は流出します。

もちろん、水に晒してから酢に漬けたり、レンジで加熱してから酢に漬けたりすることで、栄養成分が変わります。とくに、硫化アリルは刺激の強い成分ですので、胃腸の弱い方や体調が良くない時は、加熱で調整することをおすすめします。

なお、各栄養成分の酸による影響はあまりありません。酢に漬けることで、栄養成分まで含めて良い状態で保存できて、いつでも食べられることが、酢玉ねぎのメリットだと考えます。

酢たまねぎのメリットは、酢と玉ねぎを食べやすくすること

玉ねぎを酢に浸すと、辛味がまろやかになり、食べやすくなります。単体でも栄養価の高い、玉ねぎとお酢をまとめてとることができるため、健康のための新しい習慣を探している方にはおすすめの常備菜です。酢たまねぎが冷蔵庫にあると、とても便利です。皮を剥いて、使いやすいサイズに切ってある玉ねぎがいつでも使える状態にあるのです。包丁を出す必要も、涙を流すこともありません。

箸休めの一品に、そのままいただいても美味しいです。もちろん、サラダにサンドイッチ、ドレッシングなど、さまざまな料理に加えることもできます。アレンジにお困りの方には、酢たまねぎの活用術をまとめた記事をどうぞご覧ください。何でも合いますよ!

余すことなく栄養を摂るために、漬け酢も活用しよう

玉ねぎを酢に漬けることで、玉ねぎの栄養成分の一部は漬け酢に溶け出します。とば屋酢店流の酢たまねぎの場合、材料は玉ねぎと米酢だけなので、調理にも飲み物にも再利用しやすく、おすすめです。

食べやすさを重視して、らっきょう酢などの甘酢を利用して酢玉ねぎをつくる場合、塩分・糖分が気になりますね。いくら、お酢が血圧や血糖値のコントロールに役立つとはいえ、余分な塩分・糖分は避けたいです。そんな時は、酢炊き料理に使うのがおすすめです!

中野 貴之

中野 貴之

酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目

「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。

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