酢炊きとは?お酢煮でさっぱり爽やかおかず
皆さんは「酢炊き」という料理をご存知ですか?魚や肉をお酢で煮込む方法で、一般的に「酢煮」や「さっぱり煮」とも呼ばれます。酢炊きは、最初からお酢(甘酢)で煮込むのが特徴です。ちなみに、最後の仕上げにお酢を入れて煮る方法は、酢煎り・かけ酢などと呼ばれます。
酢炊きで調理することで、食材の臭みを抜き、柔らかくすることができます。酢炊きはあまり知名度のある料理ではないですが、とてもとても美味しいので、ぜひ皆さんに知っていただきたいと思います。
酢炊きはどんな味わい?
2例紹介します。こちらは「イワシの酢炊き」です。初めは酢水で炊いてから醤油ベースで煮る三杯酢ベースの酢炊きです。身離れが良く、やわらかい口あたり。きちんと酸味を感じることができて、さっぱりとした味わいで食べやすいです。
こちらは、滋賀県の老舗湖魚店「川魚の西友」さんの「小鮎の酢炊き」です。このお店では、小鮎を、細く刻んだ針生姜と一緒に甘酢で炊いてつくるそうです。醤油は使っていません。火からおろした後も酢汁に漬けてあります。鮎の色が酸によって抜けて白くなっています。
味は、酢がしっかり染みこんだ「きずし」に似た風味です。小鮎の身は柔らかく、骨を感じることなく丸ごと食べられます。生姜と甘酢の組み合わせが絶妙で、まるでお寿司を食べているような気分になります。程よい甘さで食べやすく、さっぱりした味わいで、おかずにもお酒の肴にもなります。
このように、各地域で細々と伝えられきた料理ですので、さまざまなレシピがあります。
酢炊きの基本の作り方
材料(いわしの酢炊き)
いわし(鮮魚) | 1パック(5本) |
酢 | 100cc |
お酒 | 100cc |
みりん | 40cc |
しょうゆ | 20cc |
タカノツメ | 適量c |
しょうが | お好みで |
作り方
- 【1】鍋にいわしを並べ、お酢・酒・醤油・みりん・鷹の爪・しょうがを入れる。
- 【2】アルミホイルの落し蓋をして、強火にかけ、沸騰したらすぐに弱火に落として約30分じっくり煮る。できるだけ煮汁を減らさないように、鍋の蓋もして、じっくりと煮る。
- 【3】タッパーなどに移し、粗熱が取れるまで室温で置く。
- 【4】その日に食べる場合は、お皿に盛り付けて出来上がり。
冷蔵庫で保存した翌日の方が、しっとりして美味しいです。
酢炊きにおすすめの食材
イワシやキビナゴ、サンマ、メザシ、イナダ(ブリの若魚)などの青魚で作られることが多いようです。特に、メザシの酢炊きは、発酵食文化に詳しい小泉武夫先生もおすすめしています。メザシは、イワシの小魚を軽く塩漬けし、目から下顎へ竹串かわらを通して数匹ずつ束ね、風で乾燥させたものです。干物の酢炊きは、味が濃く、酢との相性も良いです。彩りを考えると、生姜やミョウガ、タカノツメなどの薬味を細く刻んで一緒に添えたいですね。
最近では骨付きの鶏肉を酢炊きでじっくり煮込む方も増えてきています。鶏手羽元のポン酢煮込みは、調味料はポン酢だけで簡単に、さっぱりとした味わいに仕上がります。酢によって骨と肉の身離れが良くなり、箸でさくっと外れるので、子どもでも食べやすくなります。
どの食材を使うにしても、酢の量は控えめにするのがポイントです。砂糖やみりん、醤油を加えて、甘酢・三杯酢をベースに考えます。また、沸騰させると酢酸が揮発して、台所に匂いが充満するので、必ず落とし蓋をして、沸騰後は弱火にしてゆっくり加熱します。
酢炊きの魅力①骨はやわらかくなり、カルシウムが摂れる
お酢の主成分の酢酸の働きで、カルシウムが溶け出して、魚の骨が柔らかくなります。カルシウムは、人の骨や歯の形成に必要な栄養素です。国民健康・栄養調査によると、日本人のカルシウム摂取量は不足していると言われています。酢炊きで魚を煮込むと、骨までやわらかくなり、丸ごと食べることができます。カルシウム摂取に役立ちます。
酢炊きの魅力②酢酸の力で日持ちするので常備菜に
酢酸には殺菌・静菌作用があります。また、魚の臭みの元であるトリメチルアミンに作用して、臭みをとる効果もあります。保存性の高い酢炊きは、冷蔵庫に保存しておけば一週間は日持ちします。
週末に作り置きしておけば、忙しい朝食にも出せます。うまみと酸味のバランスがよく、少しの量でも満足できます。特に、夏場はさっぱりとしたものが好まれるので、冷蔵庫に常備しておきたい一品です。
酢炊きで広がるレパートリー。ぜひ試してください
酢炊きは、お酢で炊くだけなのでとても簡単な料理です。干物を使えば、魚をさばく必要もありませんし、初めての魚介のおかず料理にもピッタリだと思います。これから暑くなる季節がやってきます。さっぱりと美味しい酢炊きをぜひ一度、お試しください。
- 純米醸造酢 壺之酢 900ml
300年の伝統を誇る壺之酢は、原料が福井県産米とおいしい天然水の純米酢は、壺の中でじっくり熟成させたクセのない柔らかな酸味とまろやかな味が特徴です。
中野 貴之
酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目
「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。
関連記事
お酢を加熱すると、酸が飛んでマイルドになるけど、栄養成分はどうなるのか
お酢の酸っぱさが苦手な方には、加熱をして酸味を飛ばすことをおすすめしています。すると、必ずといって...
愛される酢大豆は栄養たっぷり。良質なたんぱく質、大豆パワーを摂取しよう!
酢大豆とは、その名の通り、大豆を酢で漬け込んだ保存食です。大豆もお酢も栄養成分が非常に豊富なため、...