愛される酢大豆は栄養たっぷり。良質なたんぱく質、大豆パワーを摂取しよう!

お酢を知ろう

栄養たっぷり酢大豆の魅力

酢大豆とは、その名の通り、大豆を酢で漬け込んだ保存食です。大豆もお酢も栄養成分が非常に豊富なため、酢大豆=健康食品というイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。この記事では、大豆の栄養について深堀りし、あらためて酢大豆の魅力を解き明かします。

大豆は栄養バランスのとれた「天然のサプリメント」

大豆には、五大栄養素(たんぱく質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラル)がすべて含まれています。なかでも、たんぱく質が非常に豊富で「畑の肉」とも言われています。日本食品標準成分表2023年版(八訂)の「黄大豆/国産/乾」によると、大豆100グラム当たりのたんぱく質量は鶏むね肉に匹敵するほどです。牛肉・豚肉にいたっては上回ります。

また、体の中で作り出すことができない必須アミノ酸9種類も豊富に含まれています。日本人に不足しがちな栄養素である食物繊維やカルシウムが多いのも特徴です。最近では、抗酸化作用があるとされる大豆サポニンやポリフェノール「イソフラボン」も機能性成分として注目されています。一種類の食材で多くの栄養素をバランスよく摂取することができる大豆は、まさに『天然のサプリメント』です。

大豆

近頃、よくお店に出回るようになった完全栄養食というものがありますね。実は、大豆と玄米の組み合わせは理想的な完全食であり、古くから日本人の健康を支えてきました。現代の完全食を調べてみても、大豆を意味する「ソイ」と名のつくものが多くあり、大豆を使って作っているものは多いようです。

酢大豆の魅力①~大豆を丸ごと食べられる

煎った大豆を酢に漬けることで、大豆はやわらかくなり、丸ごと食べられるようになります。

豆腐や味噌・醤油などの加工食品の場合、たいてい最後に絞ったり濾したりして、大豆のカスを取り除く工程があります。この大豆の搾りかす(おからや醤油粕)は食物繊維の塊です。食物繊維は、便通を整えて便秘を防ぐうえで欠かせないものです。最近では、整腸作用などの働きが注目され、第6の栄養素といわれることもあります。(※1)

大豆から食物繊維を摂取するには、丸ごと食べるのがベスト。さらに、お酢をたっぷり吸収して膨らんでいるため、毎日数粒の酢大豆で、同時に十分なお酢も摂ることができます。栄養補助にぴったりの料理なのです。

酢大豆の魅力②~カルシウムの吸収率をアップ

カルシウムが不足しがちな栄養素になってしまう理由の一つは、その吸収率の悪さにあります。食べた量の半分以上が排出されてしまうのです。

食材に含まれているときのカルシウムは、炭酸カルシウム・リン酸カルシウムなどの安定したカタチで存在しています。これらを体内に取り込むためには、強酸である胃酸でCaイオンの状態にしなければなりません。

実は、食酢とカルシウムを組み合わせることで、カルシウムの吸収率をあげることができます。食酢の濃度が高いほど効果は高いため、カルシウムの吸収率を最大限高めるには、シンプルにお酢と大豆のみを使った酢大豆レシピがおすすめです。

酢大豆の魅力③~漬けたお酢を最後まで

酢大豆は、煎ったカラカラの大豆にお酢を吸わせてじっくりと漬け込んだものを食べます。メインは大豆になりますが、漬けシロップであるお酢も最後まで活用したいですね。大豆とお酢しか使っていませんので、調味料代わりに使うことができます

お料理に使うのであれば、他の出汁素材を追加するのがおすすめです。炒ったじゃこやスルメイカ、昆布など、魚介系の出汁素材を追加して味をなじませましょう。

酢大豆の作り方・食べ方

酢大豆の材料はお酢と大豆の2つだけです。乾燥大豆をフライパンで十分に炒って、焦げ目をつけてから保存容器に入れ、お酢を注ぎます。大豆には、黄大豆・青大豆・黒大豆がありますが、どの大豆を使ってもOKです。黒豆の酢漬けはお酢がきれいに染まります。

注意:必ず乾燥大豆は加熱してください

生の大豆には、レクチンという糖結合たんぱく質が含まれています。レクチンを摂取すると嘔吐・下痢を起こすことがあります。レクチンはたんぱく質なので、加熱することで(沸騰状態で5〜10分)で活性が失われます。

生の大豆をカラカラに乾燥させたものが乾燥大豆です。水にさらしておけば、生の大豆に戻ります。当然、加熱はされていません。節分用の炒り大豆であれば、加熱済みですので問題ありません。

酢大豆のルーツ

お酢も大豆も、日本では古くから利用されてきました。大豆が中国から伝来したのは弥生時代の頃。文献上、最古の大豆の記録は『古事記』にあります。また、奈良時代の『風土記』には水田のあぜに大豆を植える様子が書かれています。(※2)

室町時代になると大豆の栽培が推奨され、生産量が増えました。農民にとって、大豆は貴重なたんぱく質源であり、必須アミノ酸の供給源。大豆はどこの家でも自家用に作っており、あぜに植えて収穫した大豆で、味噌を作ったり、きな粉にしたりしました。(※3)

一方、お酢と大豆の組み合わせがはじめて文献に登場したのは、鎌倉時代の『宇治拾遺物語』の「すむつかり」。これは、煎ったアツアツの大豆に酢をふりかけた料理で、近江国(現在の滋賀県)の郡司(偉い人)が僧侶にもてなしたそうです。(※4)このエピソードは、栃木県の郷土料理「しもつかれ」のルーツとも言われています。(※5)当時のお酢が貴重だったことを考えると、庶民ではなく高貴な方の食事だったのではないかと思います。

お酢が量産され、大衆に広くわたるようになるのは江戸時代です。庶民の家庭にお酢が行き渡るのもこの時代。家庭料理はなかなか文献として残りにくいものですが、新潟県の「酢豆」福井県の「打豆」を使ったなますに代表されるように、正月料理やお茶請けとして大豆の酢煮やかけ酢和えが各地で食されたことは想像に難くありません。

なかには、味噌づくりで使わなかった自家用大豆を酢で漬けておけば、水に戻す必要もなく、保存も利いて一石二鳥と考える人が現れるのは自然なことだと思います。こうした各家庭の知恵の結晶が、酢大豆(酢豆)のルーツといえるでしょう。

「しもつかれ」の資料によると、大豆を茹でて酢をかける料理は、節分の頃、初午で稲荷神社に供えられたそうです。そんな歴史を振り返ってから、節分の豆まきで余った煎り大豆を酢に漬けてみるのは、なかなか文化的で素敵だと思いませんか。

13代目

大豆由来の酢大豆(酢酸などの有機酸)、納豆(納豆菌や代謝物)、味噌汁(酵母や乳酸菌)、豆腐などは大豆の恵みを生かした食品ですが、それぞれに発酵が絡んだり、様々な良さがあるので、いくつかの組み合わせてバランスよくとることが日本食の真髄で、健康に繋がる道だと思います。

まとめ

栄養たっぷりの大豆をとりあえず食べておきなさいと代々教えられてきた方も多いことでしょう。なかには、酢で漬けることで「もどした大豆」を長期保存し、各家庭の貴重な栄養源として利用してきた方もいらっしゃったはずです。こうして脈々と伝えられてきた酢大豆は、今にいたるまで多くの方に愛され続けているのです。

とば屋酢店の酢大豆瓶詰めも、実店舗をはじめ、ファンの多い人気商品です。国産大豆を炒り上げ、たっぷりの壺之酢で漬けて作っています。漬け上がりを待つ必要はなく、すぐにお召し上がりいただけます。1年置いてもいたまない、冷蔵庫の常備食にしたい大人気商品です。ぜひ試してみてくださいね。

【参考文献】
※1:食物繊維|e-ヘルスネット(厚生労働省)
※2:日本人と大豆|農林水産省
※3:みその歴史(鎌倉〜室町) | みそ蔵
※4:日本古典文学摘集宇治拾遺物語巻第四ノ一七慈恵僧正戒壇築かれたる事現代語訳
※5:文化庁|食文化ストーリー創出事業

中野 貴之

中野 貴之

酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目

「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。

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