甘柿から柿酢をつくる①~アルコール発酵編
こんにちは!ブログ担当の木林です。今回は、甘柿から柿酢をつくります。もう少し詳しく言うと『柿をアルコール発酵させて柿酒をつくり、さらに酢酸発酵させて柿酢にする』という果実を原料とした醸造酢をつくります。
柿酢の作り方・分量などは「つくってあそぼう 酢の絵本」(※1)を参考にしました。酢づくりは時間がかかるので、今回はアルコール発酵編をお届けします。柿酢づくりは初めてですし、道具不足は百も承知なのでドキドキしながらの挑戦です!
※1:「つくってあそぼう 酢の絵本」柳田藤治著, ISBN:4540052004, 農文協
材料・道具
- 熟してやわらかくなった甘柿
- 水
- ドライイースト 小袋1つ
- 保存用ガラス瓶:口が大きめのものが良い
できれば甘柿より渋柿の方が糖度が高いので良いそうです!今回は甘柿しか手に入らなかったため、甘柿酢に挑戦します
【1】柿を計量する
あとで糖度調整の計算をするので、しっかりメモしておきましょう。
今回はヘタつきで、940gありました。
【2】柿を水で洗って、ヘタをとり、ガラス瓶に入れる
ヘタ付きでも問題ないそうですが、バラバラになって見た目が良くなさそうなので、ヘタを取ることにしました。ちょっと固めの柿は、4つ切りにして入れます。
【3】つぶす
熟してやわらかいので、手で押し込めば簡単につぶれます。瓶の1/3くらいになりました。
手についた柿の果汁を舐めてみるととても甘いです!
ここで甘さを確認しておくのは、次の計算のために必要な工程です!
【4】糖度を計算する
酢酸発酵にちょうどいいアルコール濃度は4〜5%くらいです。アルコール濃度が高すぎると酢酸菌は元気に活動できませんし、低すぎると別の菌が繁殖してしまいます。
アルコール発酵では、2%の糖から、およそ1%のアルコールができるので、酢酸発酵に適したアルコール濃度をつくるためには、糖度10〜12ぐらいになるように水を加えて調整します。
果汁の糖度を計るには糖度計(ブリックス計)を使うらしいですが、そんなものは家庭にはありません。代替手段として、本に記載されている値をもとに、計算します。
柿の種類 | 糖度の目安 |
---|---|
甘柿 | 14~18 |
渋柿 | 18~22 |
今回の甘柿の重さは940gです。
柿の果汁の割合を60%と仮定すると、柿果汁の重さは940g * 60%で564gとなります。糖度14%と仮定すると、果汁564g * 14%で、柿果汁中に含まれる糖の重さは78.96gとなります。最終的に糖度10%くらいにしたいので、
計算すると
水 = 225.6g
薄めすぎないように、少し減らした方がよいと書いてありましたので、今回は190g入れることにしました。
【5】ドライイーストを小さじ1杯くわえて混ぜる
柿にはフェノールという渋味成分が含まれていて、アルコール発酵しにくいので、確実にアルコール発酵させるために、イースト菌(パン酵母)を入れます。
市販のドライイースト1袋がちょうど、小さじ1杯分でした。まぜると、ものすごくパンのにおいがして、何を作っているのかよく分からなくなりそうです。
【6】細かい目のネットやガーゼなどで軽くフタをする
アルコール発酵が進むと炭酸ガスが発生します。密閉すると破裂する危険性があるため、フタをしめるのはNGです。発酵がはじまるとショウジョウバエがやってくるので、ガーゼなどで覆って、輪ゴムで止めておきます。今回は、手元にガーゼがなかったので、マスクで代用しました。
【7】夏は涼しいところに、冬はあたたかいところに放置
一晩でぶくぶく発酵しはじめます。1週間ほどでぶくぶくがおさまり、柿酒が完成するようです。今は仕込んだばかりなので、出来上がり次第、写真など追記します。ドキドキ。
うまくいくと良いですね。アルコール発酵は、1日一回混ぜる。
アルコール発酵時の後半に米酢を少し加えるとその他の雑菌の発酵を防げると思います。
なるほど!ありがとうございます!
翌朝
絵本の記載通り、一晩でぶくぶく発酵を始めたようです。液の上部はぼこぼことしていて、白っぽい部分もみられます。イーストのパンのにおいは完全に消えて、なんとなくお酒っぽいような香りがします。
13代目の中野さんのアドバイスにしたがって、スプーンで混ぜてみると泡が消滅して再び濁りました。沈殿していた種や実が全体に分散したのかもしれません。
4日後
泡の発生はだいぶおさまったようです。
7日後
諸事情で放置したところ、底の方に種と白っぽいものが。慌ててスプーンを使ってかき混ぜます。すでに焼酎のようなにおいがしていました。アルコール発酵はうまく進んでいるようです。1週間で発酵が終わる見込みでしたが、もう少し様子をみることにしました。
12日後
一日一回軽く振って混ぜることを続けて、ようやく柿酒(もろみ)が完成しました!お酒のにおいがします。焼酎?どぶろく?のような匂いと評価する声もありました。
ちょっと酸っぱいような気がするので、酢酸発酵も始まってしまったかもしれません。この柿酒をもとに、今度は柿酢を作っていきます。
※酢造りの過程でお酒をつくる行為は、酒税法の対象となる行為です。許可なく造るのは法律違反となります。したがって、一般のみなさまは真似してはいけません。この記事の内容は、酢醸造業者であり、もろみの製造免許をもっているとば屋酢店が、できるだけ写真を多く使用しつつ、五感を使って表現をすることで、みなさまのお酢醸造に関する理解を深められるように、各工程を丁寧に紹介しています。
柿の糖が酵母によってアルコール発酵したら、次は酢酸発酵へ
今回はアルコール発酵編ということで、柿の実から柿酒をつくる過程をご紹介しました。次は、酢づくりの2番目の発酵である酢酸発酵編につづきます。どうぞお楽しみに!
中野 貴之
酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目
「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。