高めの血圧を下げる、お酢の効果
お酢には、さまざまな健康効果があります。なかでも、特に注目されているのが血圧降下作用です。お酢には、高めの血圧を下げる効果があることが論文によって報告されています。この血圧降下作用は、動物試験だけでなく、ヒトを対象とした研究でも検証されています。
血圧が高めの方へのお酢の血圧降下作用についての研究
血圧が高めの被験者(最高血圧:130~159mmHg、最低血圧:85~99mmHg)を3つのグループに分け、
- ①玄米酢飲料 約15mL(大さじ1杯分、酢酸750mg量)
- ②りんご酢飲料 約15mL(大さじ1杯分、酢酸750mg量)
- ③お酢ではなく乳酸で味を似せた比較用の飲料
を、それぞれ10週間摂取してもらったところ、③のお酢を飲んでいない方に比べて、①玄米酢②りんご酢ともに、最高血圧・最低血圧が有意に低下しました。(※1)
図1:玄米酢飲料の血圧への作用
(健康・栄養食品研究6(1):51-68 2003より作成。クリックで拡大します)
このことから、食酢の血圧への関与成分は、食酢の主成分である酢酸だと考えられています。つまり、米酢や黒酢などの穀物酢、りんご酢・ワインビネガーなどの果実酢といったお酢の種類によらず、すべての食酢に共通する効果だということです。
また、図1を見ると、食酢の摂取期間が終わったあと(10週以降)には、血圧が戻りつつある様子が分かります。このことから、食酢の血圧降下作用は、食酢摂取をやめると高い血圧に戻るので継続が必要であることがわかります。
血圧が正常の方の場合、血圧低下はみられない
上記の研究は、血圧が高めの方を対象としたものですが、血圧が正常である方を対象とした検証もされています。いずれの研究でも、血圧が正常の方においては、血圧降下作用はみられませんでした。
・血圧は正常で肥満気味の日本人が食酢 約15mL(大さじ1杯分、酢酸750mg量)を12週間毎日摂取したときには、最高血圧・最低血圧の低下はみられませんでした。(※2)
・正常血圧の方と、軽度・中等度高血圧の方を対象に、お酢とかつお節が含まれている飲料を16週間毎日摂取してもらったところ、軽度・中等度高血圧の方の場合は、最高血圧・最低血圧ともに有意に低下しました。一方、正常血圧の方の場合、有意な変化はみられませんでした。(※3)
まとめ
血圧の高めの方が、一日に食酢 約15mL(大さじ1杯分、酢酸750mg量)を継続して摂取すると血圧降下することが分かりました。食酢の主成分である酢酸の機能なので、食酢の種類を問わず、すべての食酢に共通します。この血圧降下作用は、血圧が正常の方ではみられません。また、食酢の摂取をやめると血圧はまた高い数値に戻ってしまうので、継続して摂取することが重要です。
実際にお酢を飲む際は、胃を傷めないように食酢は5倍以上に薄めてくださいね。上記の研究でも希釈して摂取しています。
当店のお酢商品も、研究で示されている750mgの酢酸を摂取できるように、適量をご案内しております。
【参考文献】
※1:梶本修身, 他. 健康・栄養食品研. 2003;6:51-68
※2:KONDO and others, Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, Volume 73, Issue 8, 23 August 2009, Pages 1837–1843, https://doi.org/10.1271/bbb.90231
※3:Tanaka and others, Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition, 2009, Volume 45, Issue 1, Pages 93-100, https://doi.org/10.3164/jcbn.09-04
高血圧の予防に欠かせないのが食事の減塩
お酢には血圧降下作用がありますが、まずは、高血圧を予防するために日々の食事でしっかり減塩することが重要です。日本人の高血圧の主要な要因は、過剰な食塩摂取です。2020年の日本人の食事摂取基準の目標量では、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。
しょうゆやラーメン、漬物などの塩辛い食べ物を好む方は、あっという間に摂取基準量を越えてしまいます。塩分を摂りすぎると、血圧は上昇する傾向にあります。さらに、年齢を重ねると、血管の柔軟性・弾力性が低下して、血圧が上がりやすくなります。
食事は習慣化しやすいものですから、健康的な食習慣を予防的に身につけることが重要です。そして、減塩食を実践するにあたり、とても役に立つのが「お酢」です。
お酢で減塩!酢は塩味を引き立てる
お酢には、塩味を増強する効果があります。いつも使っている塩分入りの調味料をお酢に置き換えることで、間接的に減塩をすることができるのです。これは、酢に限らず、レモン果汁でもみられる酸味と塩味の相互作用です。うす塩の味つけでも、わずかな酢を加えるだけで、味を引き立ててくれます。
毎日の習慣としてお酢を飲んだり、調味料をお酢に置き換えてみたり、さまざまなやり方で、お酢を上手に摂取していただくことが、高血圧の改善や発症の予防につながります。
血圧を下げる成分をまとめて摂取できる組み合わせ
おすすめの食べ方は「酢納豆」です。納豆の原材料である大豆には、カリウムが多く含まれています。カリウムは、体内の過剰なナトリウム(塩分)を排出してくれるのです。また、不足しがちな食物繊維も豊富に含まれています。
朝ごはんに納豆を食べる際には、添付のタレやしょうゆではなく、お酢、またはポン酢を使用してみてください。大さじ1程度加えて、真っ白になるまでぐるぐるよく混ぜると、ふわふわになります。お酢は、納豆に混ぜると酸味がやわらぐので、お酢が苦手な人でも食べやすくなります。また、納豆が苦手な人も、お酢をかけるとニオイが軽減するので、やはり食べやすくなります。
酢納豆は、栄養成分をまとめて摂取できて、美味しく食べやすくなる組み合わせです。朝食に取り入れてみてくださいね。
中野 貴之
酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目
「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。
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