自由研究「お酢でタマゴのカラを溶かしてみよう!スケルトン卵づくり」のやり方と考察ヒント
夏休みも後半戦ですね!自由研究のテーマに悩む小学生のみなさん、お酢を使った自由研究はいかがでしょうか。お酢は、化学的にも、生物学的にも、物理的にも、社会学的にも、調理科学的にも、さまざまな分野を横断して深堀りできる、とっても面白い液体です。
この記事では、小学生のみなさんが取り組めるような定番の実験アイディアである「お酢で卵のカラを溶かしてみよう!スケルトン卵づくり」のやり方と、実験を身近なテーマに発展させるような考察のヒント情報をまとめました。ぜひ、親子で考えてみてくださいね!
お酢でタマゴのカラを溶かしてみよう!スケルトン卵づくり
タマゴを酢につけると、カラが溶けてうすいまくでおおわれた、はだかのタマゴができあがります。
所要時間:3日程度
【1】実験のきっかけ
自由研究の中で、一番難しいのは「きっかけ」だと思います。なぜ、この研究をしようと思ったかを書く項目です。何を書いてもよいのですが、そう言われると困りますよね。
- インターネットで面白そうな実験を紹介していたから
- 家にあるものでできる実験をしたかったから
- おかあさんがお酢を消費できずに困っていたから
すべて、すばらしい”きっかけ”です。きっかけを素直にそのまま受け入れましょう。そして、できれば、思い浮かんだきっかけをもう一段階「なんで?」と問いを深めてみてほしいです。
- なんで面白そうな実験だって思ったんだろう?
- こたえの例:タマゴから泡が出ている写真が不思議だったから。
- 本当に泡が出るのかな?どこから出てくるのかな?
- タマゴの中から?タマゴの外から?泡ってなに?……
- 家にあるものはいろいろだけど、なんでお酢とタマゴにしたんだろう?
- こたえの例:家にあるもので3日でできるから。
- ずっと道具を実験に借りたままだと困るかも?もっと早くする方法はないのかな?
- かき混ぜればいい?お箸でツンツンしてみようかな?
- 割れるかな?どれくらいの力で割れるのかな?……
- おかあさんはなんで困っているんだろう?
- こたえの例:お酢がもったいないから。実験でつかうのはいいのかな?
- 実験でつかったあとは、すてるのかな?それはもったいなくないのかな?
- 生卵を入れたお酢を食べればいいのかな?食べられるのかな?
- 食べられるようにするにはどうしたらいいのかな?……
疑問も、疑問のこたえも、はてなマークがついたままで大丈夫です。なんとなく、どうなんだろう?こうなのかも?と、仮のこたえを思い浮かべながら実験をすすめてみましょう。自分の中から浮かんできた疑問を掘り下げることで、同じ実験テーマでも観察する視点が変わってきます。
【2】実験のようい
生タマゴ | 1こ |
酢 | タマゴがひたひたになるくらい(200ml程度) 米酢でも穀物酢でもリンゴ酢でもOKです。 |
タマゴが入るような、 口の広いガラスびん | きれいに洗って、乾かします。 危ないので大人におねがいしましょう。 |
ガラスびんのフタ | なければキッチンペーパーやラップでもOKです。 |
【3】実験のよそう
実験のきっかけを深堀りすると、気になるポイントが浮かんできます。
Q1:タマゴの泡は、どこから出てくるのかな?
Q2:タマゴのカラを早く溶かすには、どうすればいいのかな?⇒途中で箸でさわればいい?
Q3:タマゴが溶けたあとのお酢は、食べられるのかな?
問いの形にすると、予想を立てやすいですね。この予想は、実験のあとで「予想と違う結果になった」としても問題ありません。大人の方が密着できるのであれば、問いの形にしたものをより調べやすいように、実験のやり方を変えるサポートをしていただきたいです。
例えば、Q1であれば、タマゴに絵を書いておくことが有効です。向きがわかるように、左右で違う絵を書いておくとよいでしょう。
Q2であれば、実験道具を2つずつ用意します。途中で箸で触るものと一切触らないものをつくり、2つの違いを比べることが予想を検証することにつながりますね。
【4】実験のすすめかた
定番の実験テーマということもあって、ミツカンさんがとても分かりやすい手順書をまとめてくださっています。写真付きでご覧になりたい方は、こちらをどうぞ。
①タマゴは水でよく洗います。割らないように気をつけて。
ガラスびんにタマゴを入れ、タマゴがひたひたになるまでたっぷりお酢を注ぎます。
②タマゴから泡が出てきたら、ふたをのせます。冷蔵庫または冷暗所に2〜3日おいておきます。
※ガラスびんのフタはしめないでください。びんが割れてしまう可能性があります。
③2日ぐらい経つと、タマゴのカラがとけます。
④カラがとけたらスケルトン卵の完成!
カラがのこっていたら、水でやさしく指でこするとキレイにおちます。
【5】実験のこうさつ
実験がおわったら、結果をまとめます。予想と違う結果が出たら、むしろチャンスです!なんで違う結果になったのか、考えてみましょう。
小学校高学年・中学生向けの考察ヒント
・スケルトン卵は、通常の卵と比較するとサイズが大きいです。それを、さらに水につけると、ふくれてもっと大きくなります。これは「浸透圧(しんとうあつ)」という水が移動する力によるものです。さて、水につけると大きくなるようですが、砂糖水や塩水の場合はどうでしょうか。絵の具を溶かした色水につけると?うすい膜を破って卵の中身を取り出し、別の液体を代わりに入れてみたら同じように浸透圧は働くのでしょうか?考察を深めていくと、物理学の領域に展開することができます。
・卵のつくりをみてみましょう。資料が欲しいときは本の力を借ります。
スケルトン卵はうすい膜でおおわれたブヨブヨのゴムボールみたいなものです。さて、今回溶けた殻はどの部分で、うすい膜はどの部分でしょうか。なぜ卵には殻と薄い膜の2つあるのでしょうか?膜があるということは、何かを仕切る必要があったのかもしれませんね。考察を深めていくと、生物学や進化の観点とつなげることができます。
・カルシウムがたっぷり含まれている卵のカラは、食べものとして摂取することはあまりありません。では、カルシウムが多く含まれているものと言えば、他にどんなものがあるでしょうか。例をあげると、豆腐や納豆などの大豆製品や、煮干しなどの魚です。
一つ考えてみましょう。小アジの素揚げを一匹食べたあと、その魚の骨はどうやって消化されるのでしょうか。歯で嚙み砕いて小さくしたあと、食道を通って、胃に運ばれていきます。胃の中にあるのは「胃酸」です。そう、人の身体の中には酸があるのです。
胃酸は、お酢の酸より強力な酸です。さて、ではお酢の酸はどれくらい強力なのでしょうか。動物の胃酸の強さと比べるとどうでしょうか。自分の体の機能と比べることは、学びを自分ごとにしやすいのでおすすめです。
永遠に書き続けられそうですが、このあたりで終わりにしましょう。身近なお酢を題材にした実験を通して、あなたが面白いと感じることを、あなた自身で見つけられたら嬉しいです。この記事を参考に、楽しい自由研究を進めてください!
※参考文献:21世紀こども百科 科学館(山田 卓三著)【ISBN:9784092212015】
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中野 貴之
酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目
「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。