下ごしらえのお酢で変わる!食材の色とお酢の関係
お酢は、味つけだけでなく、料理の下ごしらえの段階においても、さまざまな役割を果たします。そのひとつが、食材の色を鮮やかにすることです。この記事では、野菜や果物の下準備に欠かせないお酢の上手な使い方をご紹介します。
お酢でミョウガの色が鮮やかな紅色に
ミョウガの甘酢漬けに代表されるように、お酢で漬けたり、お酢をかけたりすることで、鮮やかな紅色に仕上げることができます。この調理方法は、色出しといわれます。PH(ペーハー)の違いによって起こる変色ですね。食材に含まれるアントシアニン色素が、酸に反応して黒紫色から紅色に変わることを利用しています。
アントシアニン色素が多く含まれている食品は、なす・むらさきいも・赤玉ねぎ・紫キャベツ・赤しそなどの野菜や、ブルーベリー・プルーン・ぶどうなどの果実類です。赤・紫・黒色の植物が多いですね。
また、新生姜や日野菜のように、皮や根っこなど一部分にアントシアニン色素が多く含まれているものも、酢漬けによく使われています。しっかりと漬け込むことで、鮮やかな赤色に染まり、爽やかな見た目に仕上がります。
アントシアニンは、酸性条件下では鮮やかな紅色になりますが、アルカリ性では、青色や緑色に変色します。お菓子づくりの時に、重曹とイチゴを混ぜてイチゴ蒸しパンを作ろうとしたら、灰紫のような色合いになったというような話はよく耳にしますね。青や緑は、どちらかというと食欲を減退させる色合いなので気を付けたいところです。
私も、紫芋パウダーを混ぜて作ったホットケーキで、げんなりするような汚い色味になって、失敗したことがあります…
美味しそうな見た目、色味を追求する意義を痛感しますね
お酢でリンゴの変色を防ぐ
リンゴの変色は、リンゴに含まれる「ポリフェノール」と「酸化酵素」、空気中の「酸素」の3つの働きが原因で起こります。ポリフェノールは、いろいろな野菜や果物に含まれています。これらの食材を切ると、切断面から「酸化酵素」が飛び出し、空気中の酸素と食材に含まれるポリフェノールを結び付けます。結果、茶色く変色してしまうのです(褐変)。
これを防ぐためには、2つ方法があります。1つ目、そもそも空気中の酸素に触れないようにすること。水につけこむことで、空気に触れさせないようにします。2つ目、酸素とポリフェノールを結びつける「酸化酵素」の働きを抑えること。漬け込む水にお酢を加えて酸性にすることで、酸化酵素の働きをおさえることができます。
このように材料の褐変や色あせを防ぐ下準備を、色止めといいます。りんごだけでなく、アボカド、桃、じゃがいも、ゴボウなども同じように酢水に漬けることで酸化による変色を防ぐことができます。漬け時間の目安は5分程度です。
お酢でカリフラワーの色止め
カリフラワーを茹でるときは、酢水を使うことで、きれいな白色に保つことができます。白色野菜には、白〜淡黄色を発色するフラボン色素(フラボノイドの一種)が含まれており、この色素は、酸性では無色で安定し、アルカリ性では濃黄色や褐色に変わる性質をもっています。茹で水にお酢を加えることで酸性にし、本来の美しい白色に仕上げることができるのです。
まとめ
お酢による色変化は、学校の理科の実験でもよく利用される身近な化学反応です。しかし、お酢と色の関係といっても、食材によって反応の原理は違うものです。まだ明らかにされていないこともたくさんあります。
お酢の酸としての働き、液体としての働き、酢酸イオンとしての働きなど、ひとつひとつかみ砕いていくことで、お酢の機能の面白さに気づき、皆さんの日々の料理がいっそう楽しくなれば幸いです。ぜひ、お酢を使った料理にチャレンジして、色彩豊かな食卓を楽しんでみてください。
【参考文献】
調理による色の変化(瓦家千代子)
中野 貴之
酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目
「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。
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