ポン酢とポン酢しょうゆの違い

ポン酢とポン酢しょうゆの違いをご存知でしょうか。まず、この問いにたどりついたあなたは、おそらく「黒くないポン酢」を発見してしまったのだろうと思います。そうです。ポン酢とは、柑橘果汁に酢を加えたものを言います。
一方、日本でもっとも一般的なポン酢は、黒いポン酢。いわゆる「味ぽん」「味付ポン酢」です。これは、醤油ベースのポン酢にみりんや鰹節、昆布などの出汁の旨味成分を加えた合わせ調味料です。鍋物の付けダレによく使われています。
ポン酢とポン酢醤油(味付けポン酢)は、名前は似ていますが、まったく別物。この記事では、その違いをさらに掘り下げて紹介します!
ポン酢とポン酢醤油の歴史・由来
まず、歴史を振り返ってみましょう。ポン酢の「ポン」の語源は諸説ありますが、もっとも有力だと言われているのが、オランダ語のポンス【pons】です。ポンスは、江戸時代に長崎の出島に来ていたオランダ人が飲んでいたという橙(だいだい)の果汁入り食前酒。時を経て、柑橘果汁のことだけを指すようになり、現代では、果汁と酢と合わせた「ポン酢」へと変化したと言われています。
一方、ポン酢しょうゆの歴史を語るのに、欠かせないのが大手お酢メーカー「ミツカン」さんの味ぽんです。ミツカンさんのサイトによると、昭和30年代のこと。7代目中埜又左衛門が、「博多水炊き」と一緒に出てきたぽん酢のあまりの美味しさに魅了され、醤油と柑橘果汁を混ぜ合わせた新しい調味料「味ぽん」を開発したそうです。
ポン酢が全国区に広まったのは、テレビCMの影響が大きいでしょう。冬になれば必ず、水炊き鍋と味ぽんをセットにしたCMを流していたおかげで、味ぽん=味付けポン酢=ポン酢という構図で、多くの人にポン酢が認知されていったのだと思います。
ポン酢とポン酢醤油の食品表示上の違い
多くの人に誤解されがちなポン酢と味付ポン酢しょうゆですが、食品表示上の違いはどう決められているのでしょうか。まず、ポン酢もポン酢醤油も、食品表示の分類上は「加工食品」の「㉑ 調味料及びスープ 食塩、みそ、しょうゆ、ソース、食酢、調味料関連製品、スープ、その他の調味料及びスープ」に該当します。
商品の裏面ラベルにあたる食品表示部分には、原材料名や賞味期限のほか、「名称」を表記する必要があります。この名称には、加工食品の内容を表す一般的な名称を表示することになっています。(消費者庁ー早わかり食品表示ガイド令和4年1月版より)

ポン酢の一般的な名称とは…?
名称は、メーカーによって表現の揺らぎがあるようです。実例を調べるしかありません。何社かラベルを調査しました。

「味付けポン酢」「ポン酢しょうゆ」「塩ポン酢」などの表現が使われており、ほぼ商品名だと思われる名称が多く使われています。つまり、ポン酢とポン酢醤油の食品表示上の違いは、一般への認知度の違いを表しており、ポン酢醤油の方が多くの人にとって馴染み深く、商品名から商品そのものをイメージできると考えられていると言えそうです。
注目すべき点は、ポン酢しょうゆの名称に「ぽん酢」だけ表記は使われていないことです。誤解を招くために、メーカー各社が使用を避けているのかもしれませんね。
ちなみに、近所のスーパーには、いわゆるただのポン酢はひとつも売っていませんでした。なんならamazonでさえ、少量お試しサイズを1本単位で購入することはできなさそうです。しょうゆ不使用のポン酢はいつか市場から消えてしまうのでしょうか…。


2024年追記:ミツカンさんのポン酢サワーのブレイクで少量お試しサイズをよく見かけるようになりましたね!塩と砂糖を入れたら、あのスポーツドリンクになるので、興味のある方は試してみると楽しいですよ~
家計調査から見るポン酢とポン酢醤油の違い
味付きポン酢・ぽん酢しょうゆの方が一般への認知度が高いという仮説を確かめるためにも、国が実施している家計調査をみてみましょう。二人以上の世帯を調査対象とした2019年~2021年の家計調査からご紹介します。
家計調査におけるポン酢とポン酢醤油の分類の違い
家計調査のしくみと見方によると、家計調査におけるポン酢とポン酢しょうゆは違うカテゴリーに分類されています。
【酢】カテゴリ。
- 米酢(ハトムギ酢 玄米酢)
- 果実酢(ポン酢 りんご酢 ワイン酢)
- 黒酢
- ビネガー バルサミコ酢
【つゆ・たれ】カテゴリ。液体のものに限る。
- つゆの素
- おでんのつゆ おでんの素
- 焼肉のたれ しゃぶしゃぶのたれ
- 味ぽん酢(しょう油入り)
つまり、しょうゆ無しのポン酢は「酢」に、ポン酢しょうゆは「つゆ・たれ」と見なされているのです。面白いですね。その上で、家計調査の結果を見てみましょう!
家計調査における使用状況の違い
令和2年の家計調査の結果、消費金額上位3都市をピックアップしました。
酢(ポン酢含む) | 消費金額 | つゆ・たれ(味ぽん酢含む) | 消費金額 | |
1位 | 鹿児島市 | 1,498 | 高知市 | 6,427 |
2位 | 大分市 | 1,117 | 堺市 | 5,973 |
3位 | 岐阜市 | 1,062 | 盛岡市 | 5,909 |
全国平均 | 890 | 5,259 |
ポン酢とポン酢しょうゆ単体の使用状況の調査ではないので、この表は参考程度にご覧ください。
酢とつゆ・たれでは、つゆ・たれの方が圧倒的に消費金額が多いことが分かります。また、各地域を考察してみると、やはり産業文化的な背景がありそうです。
壺酢・黒酢の生産地として名高い鹿児島県はお酢の消費金額もダントツで多いですね。つゆ・たれでは、カツオの消費量が多い高知県と、ふぐ料理で有名な大阪・堺市がランクインしました。
ポン酢とポン酢醤油の味の違いとおすすめの使い方
ポン酢とポン酢しょうゆ(味付きポン酢)が違うことは、これまでさまざまな角度でお話してきましたが、結局のところ、味の違いが一番重要です。
しょうゆ無しポン酢のおすすめの使い方
ポン酢は、柑橘果汁とお酢を混ぜ合わせたものなので、食塩が入っていません。酸味が味覚の中心にあるので、食材そのものにうま味があるものや、だし汁を使った料理での調味料にするのがおすすめです。例えば、魚介類ですね。出汁をとるために使う昆布やカツオ、貝類はとても相性が良い食材です。
もちろん、つけダレとしてもOK。ポン酢だけで使えば、スッキリさっぱりした味わいになります。お好みで、ほんの少し醤油を足したり、塩を加えれば味の変化もつけられます。
ポン酢しょうゆのおすすめの使い方
ポン酢しょうゆは、醬油がベースなので、それだけでしっかりと塩味があります。また、醤油には大豆由来のアミノ酸がたっぷり入っているので、ポン酢しょうゆだけでタレとして完成しています。塩分を追加すると味のバランスを取るのが難しくなるので、ポン酢しょうゆ単体を味付けの中心にすると扱いやすいです。
定番はつけダレ・かけタレとして、大根おろしポン酢にすること。水炊き鍋と和風おろしハンバーグには、ポン酢しょうゆが鉄板です。また、炒め料理や煮込み料理など、普段醤油を使っているものをポン酢しょうゆに置き換えれば、減塩にもなります。


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中野 貴之
酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目
「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。