酸の種類によるお酢の風味の違い
酸っぱい食べものと聞いて、まず思い浮かぶのは「お酢」か「レモン」という方が多いと思います。お酢の酸っぱさは、主に、酢酸によるもの。レモンの酸っぱさは主に、クエン酸によるものです。お酢とレモンの味がまったく異なるように、同じ酸っぱいものでも、酸の種類によって味や風味は異なります。
ここでは、酸の種類による味の違いと、おすすめの使い方をご紹介します。使い分けの参考にしていただければと思います。米酢・黒酢・りんご酢など、原材料の違いによる食酢そのものの分類や違いについては、以下の記事をご覧ください。
酸の種類とお酢の風味の違い
食べ物に含まれる代表的な酸は、酢酸、クエン酸、りんご酸、酒石酸、コハク酸、乳酸です。お酢は、原料や製法によって風味の違いが生まれますが、それは、いくつかの酸が複雑に混ざりあって作り出されています。
酢酸の酸味とお酢
お酢の主成分は、酢酸です。酢酸そのものの酸味は、ツンとくるような刺激的な強い酸味です。酢酸は揮発性なので、鼻やのどを刺激しがちなのです。この酢酸に、他の酸などが少しでも含まれて混ざりあうと、酢の酸味がまるくなり、風味が出てきます。「ツンとこない」とか「まろやかな」な酸味というのは、発酵や原料由来の酢酸以外の酸や他の成分がそれぞれのお酢の味の個性を出しているのです。
お酢を加熱すると酸味が減ってしまうのは、酢酸が湯気と一緒に徐々に揮発するためです。一方、加熱しても蒸発しない酸もあります。酢酸と加熱の関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。
クエン酸の酸味とお酢
クエン酸は、レモンなどのかんきつ類に多く含まれる酸で、酢酸よりも刺激の少ない酸味をもっています。お酢では、ぶどう酢・りんご酢などの果実酢に少し含まれています。ツンというよりは、キュッ。酸っぱい梅干しを食べたときのような、キュッと目をつむってしまうような酸っぱい味です。
りんご酸の酸味とお酢
りんご酸はりんご酢に含まれる酸で、おだやかな酸味をもっています。また、ぶどう酢にも含まれています。
酒石酸の酸味とお酢
酒石酸は、ぶどう酢に多く含まれています。わずかな渋味をともなう酸味で、ぶどう酢独特の酸を作り出しています。
コハク酸の酸味とお酢
コハク酸は、日本酒のうま味成分の1つとなっている酸です。米酢など穀物を原料にしたお酢に多く含まれています。特有の旨味を感じる酸味です。
乳酸の酸味とお酢
乳酸は、ヨーグルトなどの乳製品に含まれる酸で、軽やかな酸味です。
調べてみると、とば屋の純米醸造酢「壺之酢」には、乳酸やクエン酸、コハク酸、リンゴ酸など少なくとも8種類以上の有機酸が含まれていることがわかりました。「ツンとこない」、「まろやかな」、「どことなくフルーティーな」、「米麹の香り高い」などとお客様より評価を頂いているお酢の風味の理由の1つは、この複雑な酸の成分にあるかもしれません。
酢は組み合わせて使うのがポイント
酢の風味の違いを活かすためには、料理の材料や調理法に合った酢を選ぶことが重要です。
まずは、定番の使い方。材料が共通しているものを選ぶと相性が良く、おすすめです。たとえば、すし酢には、米酢や玄米酢。サラダドレッシングやマリネといった洋風料理には、りんご酢、ぶどう酢などの海外発祥の果実酢がよく合います。
一方で、酢をいろいろ組み合わせることで、より複雑な風味を作り出すこともできます。伝統料理の鯖寿司のすし酢に、従来の米酢にりんご酢を一部混ぜたものを使うと、風味が変わります。洋風料理のピクルスを米酢で漬けても美味しいです。
食の欧米化によって、日本人の食の好みも多様化しています。さまざまな醸造酢を手に入れることができる現代だからこそ、新しい組み合わせで、新しいおいしさを発見し、酸味を楽しんでいただきたいです。とば屋酢店は、米酢ひとすじで300年続けてきました。変わらない米酢のおいしさと、新しい米酢のおいしさ。その両方を楽しんでいただけるよう、皆さまにお届けしていきます。
- 純米醸造酢 壺之酢 900ml
300年の伝統を誇る壺之酢は、原料が福井県産米とおいしい天然水の純米酢は、壺の中でじっくり熟成させたクセのない柔らかな酸味とまろやかな味が特徴です。
中野 貴之
酢醸造家/(株)とば屋酢店 第13代目
「お酢のことならなんでもご相談ください」がモットー。お客様に「また使いたいと思っていただけるお酢」をお届けできるよう社員と力を合わせて精進中。セミナー講師も時々お引き受けします。
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